夏の終わりを感じる今。毎年この時期に心が浮き立つのは、KIRINのビール「秋味」の到来と、トレンチコートの出番がやって来るから!
2年前、清水の舞台から飛び降りる気持ちでアクアスキュータムのトレンチを買いました。ずっと欲しかった、憧れの一着。自分にとってはそれがトレンチコートだったのであります。中はヨレヨレのTシャツとジーパンでもいいし、結婚式のお呼ばれにだって行ける。これさえあれば。ああ、迷うことがないって楽。
セントジェームスのボーダーやジョン・スメドレーのニット、バーバリーのコート…etc、クラシックな名品たちは正直、高い。しかもこれらはスタンダードなアイテムだから、安く済ませようと思えばいくらでも別のブランドで手に入る。でも悲しいかな、駅チカで買ったボーダーのロンTは3回着れば首元ダルダル、化繊のニットはワンシーズンで毛玉まみれ。こうして安物買いのなんとやらを身をもって知るわけです。クラシックアイテム、いと強し。
そんなこんなで今回は、クラシカルなファッションが堪能できる、これからの季節にぴったりな3作を。1本目は、オシャレっ子たちの心を鷲掴みにした「キャロル」であります。
50年代のNYで運命の出会いを果たしたテレーズとキャロル。女性同士の恋愛が理解されない時代を背景に、ふたりの恋物語がスリリングに展開します。そこで富裕なマダム・キャロルが纏っているのが、素晴らしいミンクの毛皮。
値段的に手が出ないということもあるけれど、毛皮のコートを自分のものとして着こなすには、間違いなく“年輪”が必要。それはシワとかシミといった老化というよりも、顔や体型から現れる凄み、渋み、エグみとでも言いますか。キャロルを体現したケイト・ブランシェットは、一糸乱れぬブロンドの巻き髪と完璧にライン取りをした真紅の口紅、そして骨ばった体などで見事に毛皮を制していました。
百戦錬磨といった雰囲気のキャロルとは対象的に、ルーニー・マーラ演じるテレーズはまだ本当の恋すら知らない女の子。そんな初々しい役どころにぴったりのボンボン付きキャップとぱっつん前髪は目がハートになるかわいさで、キャロルの寵愛を受けるのも納得であります。
そして本作はファッションのみならず、ラブシーンもイケてます。ケイト・ブランシェットが大きな手でルーニー・マーラの頭ごとぐわしと抱え込んでキスするあたり、思わずじゅんッとなったことを告白します。
そんな「キャロル」の監督と衣装デザイナーが、同じく50年代を舞台に撮り上げたクラシカルな一品が「エデンより彼方に」。
小泉なつみ Natsumi Koizumi
きくちあつこ Atsuko Kikuchi
©きくちあつこ ©NUMBER 9 FILMS(CAROL)LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED ©MMII Focus Features LLC and Vulcan Productions Inc. ©2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC, KIMMEL DISTRIBUTION, LLC AND LIONS GATE FILMS INC. All Rights Reserved