
普段使っているクリーニング屋の店員が気になっています。パートのおばちゃん5人ほどでシフトを回しているようなのですが、おばちゃんAもおばちゃんBもおばちゃんCもみな一様に小太りでオイリーな髪質であり、化粧っ気がない。ある意味、クオリティ・コントロールが徹底されているクリーニング屋なのであります。
そんなある日、5人のなかでももっとも接触率の高かったおばちゃんAと駅の改札で遭遇。彼女は雨の中、夫か彼氏と思しき男性を迎えに来ていたのです。店のカウンターのなかでは能面のように無表情だったおばちゃんAがほんのりピンクに頬を染め上げ、露出度の高いヒラヒラとした衣を身にまとい、男にしなだれかかっていました。奇しくも私は、“おばちゃんA”が“女A”になった瞬間を目撃してしまったわけであります。
さて、本題。映画ライターのギンティ小林氏は、「ナメてた相手が、実は殺人マシンでした映画」という、男子が燃えるアクションをよく紹介されていますが、女子向け作品にこれを置き換えるならば、「地味なあの子が、実はイケてる女でした映画」ではないでしょうか。
クリーニング屋のおばちゃんが雨の夜に変身を遂げたように、女なら誰しも、周囲を「ハッ」とさせるくらい生まれ変わりたい願望を持っているものです。
なかでも「周囲からキレイになることを強制されるパターンは、女子映画の王道。自分で書いていても意味がわからなくなるほど現実にはありえない展開ですが、「デンジャラス・ビューティー」や、
「プリティ・プリンセス」、
そして「パリの恋人」などなど、
女子好みの映画にはよくあるストーリーですよね(そうそう、「パリの恋人」に出てくる狂った編集長は、#6で紹介したダイアナ・ヴリーランドがモデルです)。
そしてこのパターンに加えて大好物なのが、男性が驚きと喜びの表情で生まれ変わったヒロインを見つめるシーン!
「ザ・エージェント」では、「世界一老けている26歳」と自ら語るヒロインのレニー・ゼルウィガーが、トム・クルーズとの初ディナーで大変身。シンプルなブラックのキャミドレスで登場した彼女を見て、思わずトムも「オードリー・ヘップバーンかと思ったよ!」と目をキラキラさせていました(その後、いざコトに突入しようとレニーが寝室のドアを開けると、キリッとしたトムが直立不動で待ち受けているシーンも必見です)。
そして本丸はなんといっても、「麗しのサブリナ」であります。
お父さんから「月に手を伸ばすな」と釘を刺されるほど高嶺の花であった御曹司デイビッドを落とすべく、パリでオシャレを研究し舞い戻ってきたサブリナ。その美しさにデイビッドもすぐさまイチコロになるわけですが、そこでサブリナは改めてお父さんにこう返します。
「昔と違うの。今は月が手を差し伸べるのよ」
こんな台詞、吐いてみたいですねえ。そして相手に気づかれぬほど変身してみたいものですねえ。
イーディス・ヘッドとジバンシィが手掛けた超・有名な衣装の数々はきくちさんのイラストを堪能していただきたいと思いますが、女が変身するとき、それは勝負に出るときであります。身近なあの人に「ホゥ…」と喜びのため息をついてもらうべく、私もまずはパックでもして寝ようかと思います。
小泉なつみ Natsumi Koizumi
きくちあつこ Atsuko Kikuchi
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