『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督インタビュー| U-NEXT

『万引き家族』のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞というニュースに沸いた今年の邦画界だが、引けを取らない話題を振りまいたのが、『カメラを止めるな!』の大ヒットではないだろうか。監督、キャストともに無名。300万円とも報じられるごくごく低予算で撮られた映画はなぜ、200万人以上を夢中にさせたのか。一躍、時の人となった上田慎一郎監督に、作品の裏側を聞いた。

上田慎一郎監督作の
2作品一挙配信!

12月5日(水)配信開始

12月5日(水)配信開始

上田慎一郎監督
監督プロフィール
上田慎一郎 うえだ・しんいちろう / 1984年生まれ、滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。劇場用長編デビュー作となった本作を含め、これまでに短編含む9本の映画を監督。国内外の映画祭で多数の賞に輝いた。「100年後に観ても面白い映画」をスローガンに、娯楽性の高い作品を作り続けている。

自分の好きなことを
詰め込んでやったら、
どの作品よりも
結果が残った
(上田慎一郎 監督)

上田慎一郎監督

”好き“を詰め込んだ

自身の集大成が爆発的ヒット

ワイドショーなどでも取り上げられ、”社会現象“と呼べるヒットを記録した『カメラを止めるな!』。熱狂の渦中にいる上田監督に心境を尋ねると、「公開から4カ月経っても(取材時)まだ落ち着かず、ですね。立ち止まる暇もない嵐の日々がまだ続いているので、心境を確認している暇がないっていうのが正直なところです」という答えが返ってきた。国内外の映画祭で高く評価されるなど、インディーズの世界では知られていた上田監督。彼にとって本作は、商業映画では初の長編作品である。

「それまでは、何か結果を残さなきゃとか映画祭の出品作に選ばれなきゃとか、いろんな下心があったり背伸びをしながら作っていた作品が多かったんです。でもこれは渾身の長編として、悔いのないようにやろうと。誰にどう言われようが結果が残らなかろうが、自分の好きなことやりたいことを詰め込んでやったら、一番結果が残った。すごくシンプルですけど、自分の”好き“を信じるって、こんなに効果があることなのかと思いました。」

”好き“なものとは例えば、「ハリウッドのゾンビ映画やホラー映画。そして『ラヂオの時間』や『蒲田行進曲』、古くはトリュフォーの『アメリカの夜』とか。また『パルプ・フィクション』、『桐島、部活やめるってよ』『運命じゃない人』なんかも好きな自分がいて」。『カメ止め』を既に観ている映画好きの読者は、ここに挙がった作品が『カメ止め』に通じる要素を見いだせるだろう。『カメラを止めるな!』は、自身の集大成が大衆に受け入れられるという、上田監督にとって至上の幸福をもたらした。

”好き“を詰め込んだ自身の集大成が爆発的ヒット

不器用な人たちの頑張りが

200万人の心を動かした !

『カメラを止めるな!』の爆発的ヒットに皆が驚いた理由のひとつは、キャストに名のある俳優が1人もいないということ。つまり、”名前“以外の要素に惹かれて劇場に足を運んだ観客が200万人以上もいたということで、現在の映画制作のスタンスを問い直す出来事といっても過言ではない。監督の過去作に出演していた秋山ゆずき(”女優“役)以外は全員オーディションで選出。特筆すべきは、本作独特の制作方法だ。俳優や監督の養成スクール「ENBUゼミナール」が行う”シネマプロジェクト“の一環で作られ、講師である上田とゼミ生であるキャストたちがワークショップを重ねながら、このメンバーでしか成しえなかった映画を完成させた。

「オーディションの応募者は40人ぐらい。ワークショップに参加するには安くはない受講料がかかるので、それなりの覚悟のある人ということで数は絞られていました。過去作に出てもらっていた人もいましたが、彼らもちゃんと受講料を払って参加して、コネなしです(笑)。どんな人とやりたいのかをフラットに考えて、12人を選びました。その時点ではどんな映画を作るか決めていなかったんですが、個性を知った上で、5年前ぐらいからあったこの作品の構想の中に、みんなを放り込んでみようと。役は完全にあてがきです。有名な俳優を使うと、時間的拘束が難しくなり密なリハーサルができなかったりするんですけど、みんな無名だったおかげで、事前のコミュニケーションが本当に濃く取れた。それは大きかったですね」

不器用な人たちの頑張りが200万人の心を動かした!

結果、キャスティングは大勝利!役と演じる俳優が限りなく混然一体となった”セミドキュメンタリー“的な面白さが、『カメ止め』人気の一因となった。

「技術や力量がそこまである人たちじゃなかったので、演技をさせちゃダメだなと思ったんです。不器用な人たちがひとつの困難を乗り越える話なので、本当に不器用な人たちに『カメ止め』という困難を乗り越えていく、そんな虚実ないまぜになったライブ感を作りたかった。実際にキャストも、『役として走っているのか自分として走っているのか曖昧な時があった』って言ってましたね」

そしてラストの、あるアナログな見せ場が秀逸だ。もたらされる爽快感とカタルシスには、フィクションとは言い切れない力強さがある。

「あのシーンで『なぜか泣ける』と言う人もいるのは想定外でした(笑)。あれは撮影当日まで1回も成功できなかったんですよ。だからあれこそ、劇中と舞台裏は分かれていなかった。失敗続きだったものが、なぜ当日できたのかはわかりません。本番で頑張ったらできたっていうだけ(笑)」

劇中のリビングは監督の自宅であるなど、裏話や小ネタを聞けば聞くほど楽しい『カメラを止めるな!』は、配信サービスでの視聴に最適とも言えそう。

「繰り返したり、戻って観たりしないと気づけないようなちっちゃな遊び心も満載です。映画館ではカメラは止められないですけどU-NEXTでは止められますので(笑)、『カメラを止めるな!』の中を自由に探検して、隠された面白さを発見してほしいです」

不器用な人たちの頑張りが200万人の心を動かした!
カメラを止めるな!

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は、なかなかOKを出さず、撮影は長時間に達していた。そんななか、撮影隊に本物のゾンビが襲いかかる。監督は大喜びで撮影を続け、スタッフは次々とゾンビになっていくが…。

12月5日(水)よりU-NEXTにて配信開始
監督:上田慎一郎
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、秋山ゆずき、長屋和彰、細井学、浅森咲希奈、市原洋、山崎俊太郎、竹原芳子 他